概要 †
仕事 †
- 医師の指示を受けて医療行為のサポートをする仕事である。診療の補助がメインの業務となる。
- コメディカルの中では知識よりも手技を重視した職種である。
キャリアパス †
- 大きく分けて病院、診療所、学校教員の3つがある。
- この中で多数派となるのは病院であり、ほとんどの看護師は卒後病院でもまれながら知識を身に付けていく。そこで出世を目指すという経路がスタンダードなキャリアパスである。主任、副師長、師長、部長と出世していけば手当が出て給料は上がる。ここで注意しなければいけないこととして、「看護師は終身雇用制度が確立していない」ということである。どういうことかというと、ただ働いているだけでは役職は付かないということだ。
- 市役所や大企業であれば、年次とともに昇給昇進していくが、看護師はそうではない。看護師の場合は「どこに行っても仕事はある」というメリットがある反面、企業のように新卒で絞って皆が昇給していくという方法はとれない。人材の流動性がいい分だけ、限られた人しか出世できないのだ。そのため、恒例の平社員の看護師は多く存在する。
学校 †
- 大学看護学部を卒業
一般教養科目も学びながら看護科目を学ぶ。4ルートの中で最もゆったりとしたスケジュールであるため、総合大学の大学生活を味わいながら過ごすことができる。卒後は大学院に進んで研究をすることも可能である。
- 短期大学看護学部を卒業
看護系短期大学は3年制である。専門学校と同様の年数であるが、専門学校と比較すると一般教養科目の比率が高い。
- 看護専門学校
看護に関する知識や実技を集中的に学び、3~4年間で卒業する。授業の3分の1は看護実習に充てられている。社会人を経由して再受験で入学する人も多い。
- 5年一貫看護師養成課程
2002年度から新しく創設された。高校3年間と看護学科2年間を合わせた5年間で一貫した看護師養成教育を受ける。年齢的にはもっとも早く看護師として働ける。中学を卒業する段階で決めなければいけない。
- ある医療法人のデータによると、2006年の時点では68.4%が看護専門学校出身、24.1%が大学出身であったが、2019年の時点では看護専門学校は49.4%へ、大学は47.2%になり、大学出身の看護師が増えている。これは、日本看護協会では看護職の基礎教育を4年生にすることが必要としており、基礎教育の主体が専門学校から大学へ移行しつつある。(参考:看護職員の卒業学校別構成割合の推移)
再受験 †
- 学校を卒業しなければいけない資格の中では比較的短期間で資格を取得できるため、再受験と相性が良い。
- 2000年前後の就職氷河期世代が再受験をして看護師になるというパターンはよく見られた。
- 当時は企業への就職が非常に厳しかったため、「普通に働いて普通にお金をもらえる」資格という位置づけで看護師も注目された。
- 2012年度の看護師養成所(3年課程)における社会人経験者の割合は23.7%であった。これは、3年課程看護師養成所の学生のうち、4人に1人が社会人経験者であるということ示している。参考:「看護師等養成所の管理・運営等に関する実態調査」(2014年6月発刊)
- やや古いデータであるが、全看護学生中の大卒・短大卒の割合は、10%前半で推移(2008年10.8%、2009年12.5%、2010年14.4%、2011年13.4%、2012年13.1%、2013年11.7%、)している。※参考:全国の看護師等学校養成所1,696校を対象に厚生労働省が毎年実施している「看護師等学校養成所入学状況及び卒業生就業状況調査」の各年の入学者の学歴のデータ
看護師の状況 †
図:看護職員数の推移
- 保健師助産師を含めた数ではあるが、1997年時点では100万人、2002年時点では120万人であり、2012年時点では150万人と増加している。
問題 †
- 必修問題50問
- 一般問題130問
- 状況設定問題60問
- 合計240問
- 状況1問2点 合計300点
合格基準 †
- 必修80%以上
- 一般、状況得点率は60~65%以上を求められることが多い。
合格率 †
実施回 | 年 | 受験者 | 合格者 | 合格率 |
111 | 2022 | 65,025 | 59,344 | 91.3% |
110 | 2021 | 66,124 | 59,769 | 90.4% |
109 | 2020 | 65,568 | 58,513 | 89.2% |
108 | 2019 | 63,603 | 56,767 | 89.0% |
107 | 2018 | 64,488 | 58,682 | 91.0% |
106 | 2017 | 62,534 | 55,367 | 88.5% |
105 | 2016 | 62,154 | 55,585 | 89.0% |
104 | 2015 | 60,947 | 54,871 | 90.0% |
103 | 2014 | 59,725 | 53,495 | 89.9%(追加71.3%) |
102 | 2013 | 56,530 | 50,244 | 88.9% |
101 | 2012 | 53,702 | 48,400 | 90.1% |
100 | 2011 | 54,138 | 49,688 | 91.8% |
99 | 2010 | 52,883 | 47,340 | 89.5% |
98 | 2009 | 50,906 | 45,784 | 89.9% |
97 | 2008 | 51,313 | 46,342 | 90.3% |
96 | 2007 | 50,766 | 46,000 | 90.6% |
95 | 2006 | 48,914 | 43,211 | 88.3% |
94 | 2005 | 48,299 | 44,137 | 91.4% |
93 | 2004 | 49,204 | 44,874 | 91.2% |
92 | 2003 | 53,680 | 49,714 | 92.6% |
91 | 2002 | 53,187 | 44,820 | 84.3% |
90 | 2001 | 48,332 | 40,625 | 84.1% |
給料 †
- コメディカルの中では薬剤師に次いで給料は高い。が、高いと言っても他職種と大きく差があるわけではなく、夜勤手当の違いが年収の違いに反映されているだけである。
- 夜勤手当の相場は以下のようになっている。
三交代制準夜勤…4,149 円
三交代制深夜勤…5,066 円
二交代制夜勤…10,999円
※参考2017年病院看護実態調査
月間3~4万円、年間30~50万円になることが多い。
- 初任給350~450万円程度
- 勤続、夜勤の具合により30歳前後で500万円に到達することもできる。
- しかし、「看護師としての給料」であるため、若手もベテランも基本的には似たり寄ったりの額となる。若手であろうがベテランであろうが施設基準としては同じ一人なので、病院への貢献度は変わらないためである。これは医師でも同じであり、会社員と異なる点である。会社員の場合は、初年度400万円であれば、徐々に昇給していき40歳で1000万円に到達することもある。しかし、看護師の場合は上述の理由から給料の伸びは悪く、初年度400万円をもらっていた人でも20年経っても500万円ということは珍しくはない。
給料の伸び †
看護師の給料の伸びで重要になるのが【勤務先】である。以下にその割合を示したが、「病院」以外の看護師はほぼ全てが昇給無しもしくは微々たるものと思ってもらった方がいい。病院以外は、いわゆる「ソルジャー」として採用され、「ソルジャー」として役目を終える看護師なのである。「病院」は例外で、その規模故に主任→副師長→師長→副部長→部長というようなサラリーマン的な役職構造が構築されているため、出世次第で給料は上がっていく。看護師の最初の就職先はほぼ全てが急性期の大規模病院であるが、その病院に居続けることのできる看護師は非常に少ない。多くの診療科にまたがる多様な知識や技術が求められる難易度の高さがあり、人間関係の難しさも退職を後押しする。退職後は診療所や介護保険施設にくだり、仕事が一気に楽になるためにそこに安住してしまう。しかし、給料は上がらないのだ。看護師として給料を上げていくためには大規模病院に残り、出世して管理者側に回るしかない。
【看護師の勤務先】
勤務先 | 人数(万人) | 割合(%) |
病院 | 88.4 | 69 |
診療所 | 16.9 | 13.2 |
介護保険施設 | 10.1 | 7.9 |
訪問看護S | 6.2 | 4.9 |
社会福祉施設 | 2.2 | 1.7 |
学校 | 1.8 | 1.4 |
※2020年末、実人数ベース
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